オイルメーカーとしての第一歩 その1

これはあるオイルメーカーのお話しです。

NUTECの生みの親、NUTEC Japan社長 鳩谷和春のバックグラウンドストリー第4弾。
これは、ノンフィクションです。


オイルメーカーとしての第一歩 その1

1980年代スポーツカーのトップカテゴリー、グループCカー、そしてラリーではサファリラリーの車両に起こるトラブルを解消するべく鳩谷とオイルメーカーの共同開発作業によって、画期的な新世代のオイルを生み出すことが出来た。

それは、従来の鉱物油から化学合成油が主流となるトレンドの大きな転換点だった。

しかし、2000年を目前にして鳩谷は、所属先のトヨタレーシングデベロップメント(TRD)を退社した。管理職としてデスクワークが多くなるにつれて、現場一筋に生きてきた氏の仕事へのモチベーションが維持できなくなってきたからだ。

1998年に退社後に知人の会社に身を寄せながら一般車のパーツ開発のコンサルディングと製作を始めた。

それまで競技の場に身置いていた時とは大きく生活の環境も変わったが、鳩谷の思いの中には、TRD時代に培ったレーシングオイル開発のノウハウを一般自動車用オイルの開発に用いたらどうなるかを試してみたくなった。

最初は売れる、売れないなど関係なかった。

まず、鳩谷自身が考える最高のオイルを創ったらどうなるかだった。

当然、手がけたのは100%化学合成オイル。

それも、エステル系オイルだ。

細かな説明はせずに試作したオイルを知人の愛車に注入した。

すると「いったい何をエンジンに入れたんですか!」という声が返ってきた。

「オイルですよ。今私が最高と考えるフォーミュレーションのオイルです」と鳩谷が応えるが早いか「売らせて下さい。こんなオイルこれまでになかった。絶対に売ってみせます。だから売らせて下さい」と。

しかし、ひとつ問題があった。それは価格だ。

試作オイル製作にかかった経費を算出し、リッターあたりに計算すると約1万5000円近くになった。

どれほど性能が良くとも価格面で競争力があまりにも無い製品を市販してもしょうがない。

知人が悩んでいた顔を見ながら鳩谷が「それでは添加剤として売り出すというのはどうでしょう」と提案した。

「添加剤ですか?」「そう、添加剤です。このオイルは、これ自体、超高性能オイルなのですが、特殊な製法でオイルの粒子を他製品に比べて10分の1にしてあります。

添加すると他のオイルの粒子の隙間に入り込むのです」。添加するだけでオイルに求められる性能の全てを底上げできる特徴持つオイルそれが後のNC-80である。

nonfiction-04.jpg

一覧ページへ